恋愛対象外に絆される日
クリスマスデートってどんなだよ?
クリスマスデートに居酒屋で焼酎お湯割り飲むか?

いろいろな疑問が頭をぐるぐるしたけれど、きっとそういうことじゃないんだろうな。

またしても矢田さんの言葉がよみがえる。

――慰めてあげてね

うーーーん。矢田さん、俺に知恵を貸してくれ。
俺にできること、何だろうか。洋菓子作るくらいしか特技ないけど。

「ちょっと、トイレ行ってきます」

「あ、うん」

トイレに立つついでにレトワールから持って帰ってきたケーキをお願いして冷蔵庫に入れてもらった。こんなので喜んでくれるのかわからないけれど、畑中さん食べたがっていたし、クリスマスっぽく演出できたらいいと思う。

……クリスマスデート設定がこれで合ってるのかわからないけど。

これまたついでに店内を観察。意外とカップルが多いことに気づく。どのカップルも楽しそうだ。そりゃそうだよな、今日はクリスマスなんだから。畑中さんみたいに別れるほうがレアだ。

本当だったら畑中さんも彼氏と楽しくクリスマスディナーをしていたはずだった。あんなに綺麗に着飾って、きっと彼氏のためだったのだろう。

俺なんかに「クリスマスデート設定」なんて言ってくるくらいだから、デートしたかったんだろう。だって俺達はクリスマスは必ず仕事なのだ。畑中さんにとって今日が初めてのクリスマスデートになるわけで。

そう思うと、畑中さんの元彼に無性に腹が立った。事情は知らないけれど、何もこんな日に別れを告げなくてもいいじゃないか。

畑中さんの泣き顔が脳裏に浮かぶ。

……クリスマスデート設定、全力で乗っかるか。
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