恋愛対象外に絆される日
クリスマス夕方――。

朝からみっちり働いてクタクタだった。崩れかけてる化粧をささっと直す。ふんわりシフォンのスカートにショートブーツ。別れ話をするっていうのに、ずいぶんと可愛い服を選んでしまった。

「わぁ、結子さん可愛いです。今日は良い話だといいですね」

相変わらず陽茉莉ちゃんは天使のような微笑みで私の背中を押してくれる。

そうだよね、別れ話って私が勝手に決めつけてるだけだもの。プロポーズかもしれないわよね、なんて一縷の望みもなきにしもあらず。

「あー、やけ酒になったら付き合うんで連絡ください。仕事終わり空いてます」

冷たいんだが優しいんだかわからない言葉を放つ長峰。まあ、こいつはこいつなりに気を遣ってくれてるのはわかる。

「お先に失礼しまーす」

挨拶をしてから、レトワールを出た。

「さむっ」

冷たい空気に触れ、ぶるりと身震いした。
夕方なのに薄暗い。冬だから日が短いし、今日は曇りだったから。

街並みに溢れるクリスマスイルミネーションの通りをささっと抜けて、待ち合わせの場所へ急ぐ。行き交う人々が浮かれてるように感じるのは、私の心が荒んでいるからだろう。

駅ビルの前の大きなモミの木。クリスマス用に飾り付けられてキラキラと明かりが灯る。たくさんの人がそこを待ち合わせ場所にしているらしく、人で溢れていた。例に漏れず私もなんだけど。

待ち合わせは18時。時計を確認すれば五分前。
周りにいた待ち合わせ人たちが、一人、二人と去っていく。

18時5分。
……来ない。あれ? 私、時間間違えた? 待ち合わせ場所ってここだったよね?

携帯電話を確認する。連絡もない。
電車遅れてる? 渋滞してる? 事故?
もう少し、待ってみようか。

18時15分。
心配になって電話をかけてみた。
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