恋愛対象外に絆される日
ようやく繋がったと思ったのに。

『あー、ごめん。今日行けないわ』

第一声が、それ。
思わず腹の底から不快な声が出た。

「はあ? 話があるんじゃなかったの?」

わざわざ! クリスマスに! ディナーしよって!
そっちから言ったくせに。

『あー、うん。あるよ。俺たち、別れよ』

それはもう、いとも簡単にあっさりと。
鳩が豆鉄砲食らうってこういうこと? なんて余計なこと考えたりした。

電話の向こうが騒がしい。
なんとなく女の影が見えた。

「ねえ、別れる理由は何?」

『うん? 君はいつも仕事優先だったからさ、俺の存在は邪魔でしょ』

「私のせいにするつもりなのね」

『お互いに我慢するのはよくないなと思っただけだよ』

我慢ってなんだ、我慢って。
こいつ、こんな奴だったっけ?
もう少し誠実な男だと思ってたんだけど。

ていうか、好きな女ができたからってハッキリ言えよ。あー、腹立つ。

怒りで体が震えそう。

「新しい彼女とお幸せに」

新しいのか知らんけど。もともと二股かけてたかもしれないし。まあ、真相なんてどうでもいいや。

一方的に電話を切ってやった。その場でヤツの連絡先を削除する。跡形もなく、後腐れなく。

わあっと歓声があがって顔を上げる。
チラチラと雪が舞ってきた。天気予報どおり、ホワイトクリスマスだ。

イルミネーションと雪が相まってとても綺麗。それを見上げながら微笑み合うカップルたちも可愛らしい。

それがもうできない。私はたった今、恋人と別れたのだから。ううん、別れなくても恋人とクリスマスを過ごしたことなんてなかった。貴文の言う通り、私は仕事優先だったから。

もう少し、可愛い女でいたらよかったのかな。
クリスマス、一緒に過ごしたいよって言えたらよかった。

いつまでそうしていただろう。
体はすっかり冷え切っていた。
何か温かいものが飲みたい。
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