恋愛対象外に絆される日
たぶんかつてないほどニヤけてしまったのだろう。結子さんは不思議そうな顔をする。

「どうしました? シュークリーム食べたい禁断症状ですか?」

「……そうみたい。早く買って食べよ」

結子さんはさっさとコンビニへ入り、一直線にスイーツコーナーへ向かった。コンビニにもいろいろなスイーツが売っている。当然だけどレトワールとは違うラインナップ。どれも美味しそうだな。眺めていると「食べるよね?」と確かめられた。他のスイーツに目移りする前に買わないとな。

「もちろん」

答えたら、結子さんはシュークリームを二つ手にとってレジへ直行。そんなに食べたかったんだな、シュークリーム。俺の分まで買ってくれるっぽいので、俺は温かい缶コーヒーを二つ購入した。

コンビニのレジ横に設置されているイートンコーナーの端でおやつタイムだ。テーブルの上に缶コーヒーを置くと、結子さんはキョトンとする。

「コーヒー買ったの?」

「シュークリームにはブラックコーヒーでしょ。はい、これは結子さんの分」

「わ、ありがとう」

めちゃくちゃ嬉しそうな顔で受け取られ、買ってよかったと思った。こんな缶コーヒーごときで喜んでもらえて、それを嬉しいなんて思ってしまう俺はもう重症だろうか。

ぱくりとかぶりついたシュークリーム、結子さんはふふっと笑う。

「美味しすぎる。ずっと求めてた味」

頬を押さえる仕草すら、愛おしい。
ずっと見ていたい。

「ふっ、幸せそうな顔」

「甘いもの食べると幸せでしょ」

「間違いない」

つられて俺も笑顔になる。
結子さんといるとすぐに頬が緩んでしまう。見ているだけでも心があたたかいのに、笑ったら余計にほんわかした何かに包まれているような気分になった。外は寒いのに、その寒さを忘れてしまうくらいのぬくもり。

幸せってこんなふうに感じるものなんだと、じんわりと実感した。
< 62 / 106 >

この作品をシェア

pagetop