恋愛対象外に絆される日
畑中結子 05
少し遅めの昼食、夕方にシュークリームを食べたらお腹が満たされた。このまま長峰と年越しをする選択肢もあったけれど、コンビニを出てバイバイした。

一人になってこの気持ちを整理したいと思ったから。

だけど去っていく後ろ姿を見て、何度も振り返っちゃうあたり、やっぱり私は長峰のことが好きなんだと認めざるを得ない。

……どうしよう。
こんなにドキドキするなんてありえない。

年が明けて出勤したとき、どんな顔で会えばいいのだろう。いつもどうしていたっけ? 数日仕事が休みでよかった。考える時間ができるから。

自宅に戻り電気を点ける。明るくなった部屋は今日長峰と一緒に掃除してピカピカ。玄関先には大きなゴミ袋が二つ。無造作に投げ入れられた貴文の私物。

捨てるのを躊躇った私に対して容赦なく切り捨てた長峰。モヤモヤしていた気持ちが長峰によって綺麗に整理されていった。

毎年大晦日は貴文とダラダラ掃除をしてダラダラ紅白を見てなし崩し的に年を越していた。今日はもう何もやることがない。一人で紅白を見て年越しだ。

冷蔵庫から缶チューハイを出す。少しだけ小腹がすいた。つまみがほしい。余っているキムチで豚キムチを作った。ごま油の良い香りが掃除したてのピカピカの換気扇に吸い込まれていく。お出汁と醤油で味付けをして贅沢に卵でとじた。我ながら良い出来だ。

「やば。めっちゃ美味しい」

一人で大興奮。それなのに誰も相づちをうってくれない。長峰だったらなんて言うだろう。美味しいって言ってくれるだろうか。

「……何を考えているんだ、私は」

手料理を食べてもらいたいだなんて、恋する乙女か。
盛大に頭の中でツッコんだ。

テレビでは紅白が始まった。
もう今年も終わりが近い。
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