恋愛対象外に絆される日
「あーもう、私、重症じゃん〜」

ボフンとベッドへ突っ伏す。
寝転がったまま、すぐに返信した。

【あけましておめでとう。今年もよろしくね。】

さすがにハートマークはつけなかったけど、ペコリとお辞儀をしているスタンプを添えた。すぐに既読になって、また嬉しくなる。

【実家、気を付けて行ってきてください】
【ありがとー。長峰はお正月どこか行くの?】
【親戚と酒盛り(付き合い)】
【飲みすぎないようにね】
【飲みすぎたら介抱してください】

介抱って……。どれだけ飲むことやら。
思わず笑ってしまう。

【寝正月じゃん】
【それもありかもしれない。外寒いし】

ありなのかよ。
ふふふ、とまた笑いがこみ上げた。

メッセージのやりとりが楽しい。いつ終わればいいのかわからなくなっている。こんな感覚も久しぶりな気がした。

と、ふいに電話が鳴る。

「もしもし?」

『結子、あなた今日何時にこっちに来るの?』

母からの電話。気づけば家を出ようと思っていた時間はとっくに過ぎている。ガバリとベッドから体を起こした。

「あー、今から家出るとこ。夕方には着くわ」

電話しながら身支度を整える。一泊分の用意とレトワールの菓子折りをしっりと携えて、私は家を出た。

「あー、今日も寒いわね」

長峰の言う寝正月もありかもしれないな、なんて思いながら駅までの道を歩く。途中、携帯電話がメッセージを知らせる。

【寒いので手袋使っていいですよ】

まるで私の行動を見ているかのような絶妙なタイミング。ポケットに入ったままの手袋を取り出す。

「……あったかい」

長峰の優しさが心に沁みた。
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