恋愛対象外に絆される日
「……何です?」

「いや、遥人くんっていつの間に結子さんって呼ぶようになったのかなーって思って」

「……」

「ごめん、触れちゃダメだった?」

俺が黙ったので矢田さんはごめんねと何度も謝る。いや、そういうことじゃないんだ。俺、いつの間にか自然に「結子さん」って呼んでたんだな。自分の中ではそれがもう定着してしまっている。

「そういえば矢田さんと語りたいなと思ってたんですよ」

「うん、何について?」

「結子さんが可愛すぎる件について」

「おおおっ!」

矢田さんは両手で口を押さえて目をキラキラさせた。そしてうんうんと首がもげるほど頷く。

「わかる! 結子さんってめちゃくちゃ可愛いよね。うわー、ついに遥人くんもその魅力に気づいちゃったかー」

「気づいてしまいました。結子さんって完璧に見えてちょっと抜けてる。でもそこが可愛い」

「そうそう、そうなの。しかも美人で強気なのにたまに照れたりするとすっごく可愛い」

「わかる」

俺もうんうんと首がもげるほど頷く。
ほらやっぱり矢田さんはわかってくれた。結子さんがいかに可愛いかということを。

「だからね、心配なの。結子さん無理してないかなって。頑張って倒れたりしてないかなって」

「そうですね」

「遥人くん今日早番だから早く上がるでしょ? 様子見てきてよ」

「あー、そうっすね。ヨーグルトとかゼリーとか持って行ってきます」

「遥人くんが行ってくれるなら安心だね」

矢田さんはニコッと笑って仕事へ戻って行った。

休憩時間に結子さんへメッセージを送ってみたけれど、休憩が終わるまでに返事が返ってくることはなかった。だから余計心配になる。

その後矢田さんから「結子さんやっぱりインフルエンザだって。しばらくお休みするみたい」と教えてもらった。だからヨーグルトとゼリーと飲み物をたくさん買って差し入れようと心に決めた。

早く仕事終わらせよう。
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