恋愛対象外に絆される日
背の高いイケメンがこちらに向かって歩いてきた。まっすぐこっちに。なんだ、こんな日にナンパか? と思ったら、ただの長峰だった。やばい、あいつのことイケメンに見えちゃったわ。まあ、確かに整った容姿はしてるなー……。

「何じろじろ見てるんです?」

「いや、長峰だーと思って」

「はあ? てゆーか、いつからここにいるんですか」

めっちゃ呆れた顔をしながら長峰の腕がこちらに伸びる。なんだなんだと思っていると、頭に軽く触れられる。わしゃわしゃと撫でられた。

「雪、積もってるんですけど」

「えー、うそ?」

「鼻も赤いし耳も赤いし、どういうこと?」

「今日寒い」

「寒いのにずっとここにいたってこと?」

「そういえばずっとここにいたわ」

基本敬語なのにたまにタメ口になる長峰が面白い。呆れた顔もなんか面白い。と思って見てたら――。

ふわっと首にマフラーが巻かれた。長峰がしてたやつだからほんのり(ぬく)い。

「なに?」

「見てるこっちが寒いから巻いててください」

耳にもかかるように巻いてくれる。
首回りがもこもこになった。

「確かにさっきからずっと寒くて震えてた。あったかいわ~」

「俺は寒いですけどね」

「じゃあ返す」

「いいって。やけ酒するんでしょ。どこ行きます?」

「どこでもいいけど、今日席空いてるかなぁ?」

「居酒屋なら空いてるでしょ。二人だし」

長峰は歩き出す。私も後に続いた。
モミの木の番人からようやく解放された。
私が抜けたあとにはまた他の人が、誰かを待つんだろうな。



< 8 / 106 >

この作品をシェア

pagetop