恋愛対象外に絆される日
座ってるだけの私の前に、箸とカップ麺とコップが並べられた。ついでに薬も、忘れるなと言わんばかりにセットされている。実に甲斐甲斐しい。
「……長峰ってさ、何で私のこと好き?」
つい、口をついて出た。だって長峰は陽茉莉ちゃんみたいな柔らかい雰囲気の可愛らしい子が好きだと疑ってなかったから。だから私みたいにガサツな女は少しも興味ないと思ってた。しかも年上だし。
長峰はうんと首を傾げてから、ゆっくりと口を開く。
「好きになるのに理屈はいらない。好きなものは好き」
まっすぐな瞳が私をとらえた。
ぐっと息が詰まる。
ドキンドキンと鼓動が速くなる。
「……私も、長峰が好き」
そう、理屈じゃなくて。
好きなものは好き。
好きなんだよね。
「じゃあたくさん食べて早く体調万全にしてください。治ったら、ちゃんとしたラーメン食べに行きましょう」
「ラーメンデート!」
「そう、設定じゃなく、本物のデート」
「もう治った」
「んなわけない」
長峰は笑いながらカップ麺の蓋を開けてくれた。醤油風味のいい香りが部屋に漂う。ただのカップ麺なのに、長峰が作ってくれたってだけで何倍も美味しい気がした。
年明けからインフルエンザになって大変で、そんなときに貴文が合鍵で勝手に入ってきて最悪だったのに、突然現れて助けてくれた長峰。
「ねえ、長峰ってスーパーマンみたいだね」
「できる男」
「ドヤるな」
ふっと笑みがこぼれる。
おかしくて二人で笑った。
いつもの長峰。
いつもの私。
「ねえ、私たち恋人?」
「そのつもりですけど、問題あります?」
「ないけど実感ない。いつも通りすぎて」
「それは……これからなんじゃないです?」
これからのことを考えて期待が膨らむ。
とりあえずラーメンデートだ。楽しみ。
「インフルエンザ治らないと何もできないですよ」
至極真っ当なことを言われてぐっと言葉に詰まった。そりゃそうだ、熱が下がらないと外にも出られないのだから。と思ったのだけど――。
「マスクの上からでいいなら」
「え?」
マスク越しに触れる唇。微妙な感覚……だとしてもめちゃくちゃときめいてしまって、バカみたいに熱が上がりそう。やばい、なにこれ、甘い。
「う、うつったらどうするのよっ」
「あー、じゃあ、結子さんに看病してもらいます。よろしく」
「……じゃあ、もう一回、して」
お願いしたら、後頭部を引き寄せられてもう一度マスクごしにキスをくれた。
離れていくときの長峰のくっと微笑んだ表情がとんでもなくかっこよくて、熱暴走を起こしそうになる。ときめきすぎて死ぬかと思った。
「……長峰ってさ、何で私のこと好き?」
つい、口をついて出た。だって長峰は陽茉莉ちゃんみたいな柔らかい雰囲気の可愛らしい子が好きだと疑ってなかったから。だから私みたいにガサツな女は少しも興味ないと思ってた。しかも年上だし。
長峰はうんと首を傾げてから、ゆっくりと口を開く。
「好きになるのに理屈はいらない。好きなものは好き」
まっすぐな瞳が私をとらえた。
ぐっと息が詰まる。
ドキンドキンと鼓動が速くなる。
「……私も、長峰が好き」
そう、理屈じゃなくて。
好きなものは好き。
好きなんだよね。
「じゃあたくさん食べて早く体調万全にしてください。治ったら、ちゃんとしたラーメン食べに行きましょう」
「ラーメンデート!」
「そう、設定じゃなく、本物のデート」
「もう治った」
「んなわけない」
長峰は笑いながらカップ麺の蓋を開けてくれた。醤油風味のいい香りが部屋に漂う。ただのカップ麺なのに、長峰が作ってくれたってだけで何倍も美味しい気がした。
年明けからインフルエンザになって大変で、そんなときに貴文が合鍵で勝手に入ってきて最悪だったのに、突然現れて助けてくれた長峰。
「ねえ、長峰ってスーパーマンみたいだね」
「できる男」
「ドヤるな」
ふっと笑みがこぼれる。
おかしくて二人で笑った。
いつもの長峰。
いつもの私。
「ねえ、私たち恋人?」
「そのつもりですけど、問題あります?」
「ないけど実感ない。いつも通りすぎて」
「それは……これからなんじゃないです?」
これからのことを考えて期待が膨らむ。
とりあえずラーメンデートだ。楽しみ。
「インフルエンザ治らないと何もできないですよ」
至極真っ当なことを言われてぐっと言葉に詰まった。そりゃそうだ、熱が下がらないと外にも出られないのだから。と思ったのだけど――。
「マスクの上からでいいなら」
「え?」
マスク越しに触れる唇。微妙な感覚……だとしてもめちゃくちゃときめいてしまって、バカみたいに熱が上がりそう。やばい、なにこれ、甘い。
「う、うつったらどうするのよっ」
「あー、じゃあ、結子さんに看病してもらいます。よろしく」
「……じゃあ、もう一回、して」
お願いしたら、後頭部を引き寄せられてもう一度マスクごしにキスをくれた。
離れていくときの長峰のくっと微笑んだ表情がとんでもなくかっこよくて、熱暴走を起こしそうになる。ときめきすぎて死ぬかと思った。