恋愛対象外に絆される日
エピローグ
すっかりインフルエンザもよくなって、無事長峰も感染せずいつもの日常に戻った。年明けから休みまくってしまった私は、その分を取り戻すべく仕事に勤しむ。

次の休みは長峰と念願のラーメンデートだ。シフト勤務の私達はレトワールの定休日である水曜日が唯一同じ休み。あとは頑張って示し合わせないとなかなか一緒に休みが取れない。ま、レトワールで会うからいいんだけど。

「俺は不満ですね」

「もー長峰ったら私のこと好きすぎか」

「そうですよ」

冗談で言ったのに本気トーンで返されて私だけドキドキしている。もー、無駄にかっこいいんだよ、長峰はさぁ。

「結子さん愛されてていいなぁ」

陽茉莉ちゃんがニコニコしながら言う。

どの口が言うんですかー? 陽茉莉ちゃんこそ水瀬さん(陽茉莉ちゃんの彼氏)に愛されまくってるくせに。うちはうち、よそはよそ。私達はまだ始まったばかりだから、この先どうなるかわからないじゃい。なんて思うのだけど――。

どういうわけか毎日好きが積もっていくわけで、もう浮かれるのも程々にしなよって頭の中で真面目な私が戒めようとするのだけど、それを超えて好きがいっぱいで困る。

別に仕事中長峰と絡むわけじゃないし、しょっちゅう姿を見ているわけでもない。長峰のことばかり考えているかというとそうでもないし、めちゃくちゃ真面目に仕事をしている。

なのに、ね。
長峰がそこにいて、私のことを好きだって思っててくれるだけで幸せっていうか……。なんて安上がり。きっと単純なんだろうな、私。

「ほんとにさー、もー、長峰好き」

出来上がったケーキを運んできた長峰に恨み節かのように呟く。可愛げもあったもんじゃない。それなのに長峰はぎょっと目を丸くして、少し照れくさそうにする。

「……ケーキ全部落としそうになったのでやめてください」

「……すみません」

普通に叱られた。
すまないね、危うく大惨事になるところだったわ。
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