恋愛対象外に絆される日
「幸せだ……」

しみじみと長峰が言う。そんなふうに思ってくれることが嬉しい。だけど私はもっともっと長峰に幸せになってもらいたい。幸せをあげたい。

「こんなので満足しちゃっていいの?」

「もっと高みを目指します」

「真面目か」

そのままベッドへぼふんと寝転がった。
トクトクと心臓が音を立てる。
どちらからともなくキスをした。さっき食べたシュークリームの味。甘くて蕩けそう。

「……この前は本当にびっくりした」

「なに?」

「結子さんと元彼とのバトル」

「ああ、あれかぁ。私もびっくりしたよ。だってあいつ勝手に入ってきたからさ、泥棒かと思ってフライパン武器にしたの」

「戦うつもりだったってこと?」

「だって怖かったのよ。でも長峰が助けてくれたじゃない」

「たまたまですけど……でも何もなくてよかったです」

「……あの日あいつに抱きしめられて嫌だった」

私の言葉に長峰がカバっと身を起こす。
わなわなと怒りださんばかりの長峰の腕を引っ張ってもう一度引き寄せた。

「蹴ってやったの、あいつの股間。床に転がって悶えてたわ」

「……今ちょっとひゅってなりました」

「だからさ、長峰で上書きしてくれない?」

長峰のたくましい腕に自分から巻き付く。それに応えるように、また柔らかく抱きしめられた。大事にしてくれているのがわかるちょうどいい強さに身を委ねる。

「上書きじゃものたりないので、削除して新規保存で」

「ちょっとよくわかんない」

「俺しか見えないようにします」

「もう遥人しか見えないよ」

名前を呼んだら固まった。
可愛いくらいに耳が赤くなっている。

「……結子」

「!!!」

今度は私が固まる。

「ふっ、耳まで真っ赤」

「は、遥人だって」

「可愛いですよ。結子さんは綺麗で可愛い。大事な俺の彼女です」

長峰のくせに、年下のくせに、弟みたいって思ってた。でももう、そんなの微塵も思わない。私の大事な大事な恋人。肌を寄せ合うことだって何ら抵抗がない。いっぱい触ってほしい。

「ねえ、明日どこのラーメン食べに行く?」

「こってりがいいんでしょ?」

「どこか美味しいところ知ってる?」

「知らないから後で調べる。ていうか、花より団子ですか。ラーメンよりも今は結子さんを食べさせてほしいんですが」

「いいよぉ。存分に召し上がれ」

「いただきます」

「真面目か」

笑い声がだんだんと甘い吐息に変わっていく。
そんな過程もまた好き。

「遥人、好き」

呟いたら、返事と言わんばかりの甘い甘いキスをくれた。



【END→次頁あり】
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