妖怪ホテルと加齢臭(改訂版)久遠と天音

女将の動揺

ああ・・・背中があったかくて・・ぬくぬくして
天音は薄目を開けた。
障子越しに、朝日が差し込んでいるのがわかる。

「うむ・・?」
お腹に、腕がまわされている?
「まだ、寒いよ・・」
すぐ上で、久遠の眠そうな声が・・・
同じ布団で、バックハグ状態で横になっているって、どういうことだってか?

「加齢臭・・」
久遠が、つぶやくように、天音の耳元でささやくように言った。

「カレイシュウ・・?」

ギャウワウワウーーー
天音は布団から、ウサギのスピードですっ飛びだした。

「カカカ、加齢臭って!!!」

バックハグ状態で添い寝されていたショックより、加齢臭と言われる方が・・・・・
天音はびっくりこいた状態で、畳に座り込んだ。

「あのっ、タカハラサマ!!」
「んん、どうしたの?」
久遠はまだ眠たげに
「朝方、冷え込んで寒そうだったから、布団に入れてあげたんだけど」

私は・・猫かぁ・・・
久遠は当たり前というか、平然と宣(のたも)うた。
「風邪ひいちゃうと、大変でしょ」
それから布団をかぶりなおすと、目を閉じた。

「まだ時差ぼけだから、もう少し寝る」

天音は・・・畳に手をついて、大きくため息をついた。
着衣に乱れはない。

久遠は純粋に、「天音が寒そうだから布団に入れた」という行動をとったのだ。

んんんん・・・?カレイシュウ・・・とは・・?

天音は、自分の脇の下の臭いをかいだ。
コウネンキ、更年期、女性ホルモンの低下、加齢臭、親父臭い・・・
まさか、まさか・・・天音は顔をゆがめた。
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