妖怪ホテルと加齢臭(改訂版)久遠と天音
しばらくして、久遠は周囲を見回すと

「ここさ、グランピング、いいかもしれないって思っているんだ。
外でBBQできれば、盛り上がるしね。ファミリーとか友達でも楽しめる」

天音は、久遠の目の付け所に感心した。
アウトドア路線か・・・ソロキャンプとかはやっているご時世だ。

「露天風呂と、あの日本酒があれば最強だな」
久遠がカメラレンズを天音にむけたので、すぐに天音はフレームアウトするように、場所移動をした。

写真は・・苦手だ。

「夜空もきれいです。満月の時は・・・」
「ヨーカイがでる?」
久遠はおどけて笑った。
どれだけ怖がりのくせして、よく言うよ。

「今は出ません!」
天音はきっぱりと宣言した。

庭から戻ると、久遠は廊下で、祖母の美人画を眺めていた。

柳のようにたおやかで、斜め横向きにうつむいている。
「この人、森の精霊みたいだ。天音ちゃんと雰囲気が似ている」

森の精霊ねぇ・・・

どのようにリアクションしていいか、わからない。

「この人みたいに、着物で写真撮りたいんだけど。絶対映えるから」

久遠は「このモデルは君しかいない」という視線を天音に投げた。
天音はいやいやと、首を振って

「私はモデルではないので・・それに顔出しはちょっと」

「後ろ姿でいいよ。ヨーカイ旅館(ホテル)にふさわしい、ミステリアスな感じにしたい」

<販売促進><宣伝効果>別のマジックワードが浮かぶ。

天音は、急いで納戸にある桐のタンスを開けた。
母の留めそで、確か、裾模様にもみじが散らされているのがあったはず。
手早く数本の帯と着物を選んだ。

「羽織るだけでいいですか?」
そう言いながら、もみじが美しく見える部屋の障子を開けた

天音は打掛風に黒の留めそでを羽織り、背中をむけてうつむき加減に障子のさんに手をかけた。

「あーーー、靴下脱いで・・裸足がいい。つま先を出して」
久遠がアングルを決めながら、指示をだした。
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