妖怪ホテルと加齢臭(改訂版)久遠と天音
昔、恋愛運は悪いと言われたが、仕事運と子ども運はいいのかもしれない。

天音は、久遠にホールドされたまま、
「セフレとは手を切りなさい。業務命令です」

どさくさにまぎれて、いろいろ言っておこう。
「OK、マイ・スィート・ボス」
久遠が耳元でささやく。

「キスしたいな」

いきなり迫られたので、天音はガバッと飛びのき、花束でガードした。
「病人とは、できません!!」

「じゃぁ、来週ならOKだね」
いきなりの花束反撃に、久遠が吹き出しておかしそうに笑った。

「まぁ、それは・・契約外の話ですから・・」
天音の声が、小さくなる。

エミリアという女性との、あのキスシーンが、フラッシュバックする。

「契約成立だから、握手くらいならいいだろう?」
久遠が、手を差し出した。

片腕は点滴で、つながれているから・・そうは動けないはずだ。
天音はおずおずと、手を差し出した。

しかし、久遠にぐいっと手首をつかまれ、またもや抱き寄せられてしまった。

「キスは来週、今日はハグだけ♪」
久遠は歌うように、楽しそうに言ったが・・・

天音の脳みそは思考停止でグルグル、ローディングしている。

思いつき、勢いで言ってしまったが、果たして、5個下のセフレ持ちのインターナショナルな男とやっていけるのか。

来年の今頃は、どうなっているのだろうか・・・・どうにかするしか、ないのだ。

三代目女将になるなら、まだ着物は処分しないでおこう。
天音は、抱きしめられたまま、考えていた。
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