妖怪ホテルと加齢臭(改訂版)久遠と天音
髪色は漆黒だが、天パのせいか、軽くウェーブがかかり、長めなので襟足でしっぽのように束ねている。
顔立ちは彫りが深めだ。

鼻筋が通り、二重のくっきりとした目だが、伏せるとまつ毛が長く、影を落とす。
彫刻のように完成されている。

端麗、でも辛口ではない・・・きりっとはしていない。
少し目じりが下がっているのが、ご愛敬だ。

小麦色に日焼けして、背中に麦わら帽子をしょっている。

よれよれのグレーのTシャツと、ダメージジーンズは、相当年季が入って、洗濯をしていなさそうに見える。
ついでにビーサン、裸足ときている。

美形の浮浪者、いや、放浪者・・・と言ったイメージ。

天音は、警戒モードをさらに上げ、声を張り上げた。

「あの、ここは私有地なので、立ち入り禁止です。出て行ってください」

男はリュックから書類の束を取り出して、天音を見た。
「連絡が・・いっていなかったのか・・・」
男は独り言のように言って、パスポートらしき小さな手帳を掲げた。

「俺は、変な奴じゃないけど・・・ここのホテルの調査で来た。君はこのホテルの関係者?」

パスポートの色は、日本ではない。
この人は、外国の人?調査って・・この人が?

「あのぅ、今日は来れないって、キャンセルの連絡をいただきましたが」
天音は、まだ警戒モードを崩さず距離を取っている。

男は自分が不審者と見られていることに、戸惑い弁明するように、
「ああ、飛行機が遅れて・・・無理かなって思ったんだけど、無理してきちゃった」

男は白い歯を見せて、ふふっと無邪気に笑った。
「ヒッチハイクしたら、うまいぐあいに、こっちに帰るトラックに、のっけてもらえてさ。
ラッキーだったね」

天音は、この男の対応をどうしようか、考えあぐねていた。

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