朱の悪魔×お嬢様
やがて辿り着いたのは、屋敷の主、羽須美財閥の当主を殺した部屋だった。
部屋の中をちらりと窺う。
一瞬しか見えなかったが1人の女性が泣いていた。
扉に背を向けていたのでここからでは後ろ姿しか分からなかったが、女性で間違いないだろう。
(そういえば、1人娘がいると言っていたな…殺し損ねたか)
気配を消して部屋に入る。
女性の後ろ姿をしっかりと見た時、足が止まってしまっていた。
(なっ…)
似てる、“あの人”に…。
さっきとは違う理由で鼓動が早まる。
…でも、“あの人”なわけない…だって、何百年も前にすでに死んでいるのだから…
頭を振って、思考を振り払った。のんびりしている暇は無い。今は時間が無いのだ。集中しなければ。
すると、座り込んで泣いていた女性が急に立ち上がり、フラフラと頼りない足どりで歩き出した。
素早く女性の後ろにつくと、女性の両腕を取ってねじ上げ、動きを抑えた。
女性は突然の事に驚いたらしいが、我に返って腕から抜け出そうともがく。
「動くな」
冷ややかな声で言うと同時にナイフを取り出し、女性の頚動脈に当てた。
女性の動きが止まる。むしろ無気力に“早く殺せ”とでも言うかのように全く動かなくなった。
…おかしい。何故私はこの女性を殺さない?
普段ならもうとっくにこの女性の首は繋がっていないはずだ。
見つけた時点ですでに殺していた。
無意識に手がカタカタと震えている事にふと気付く。
私は…恐がっているのか?“あの人”に似ているこの女性を殺す事を。
「何で、ためらうの?何で、震えているの?…あなた、恐いの?」
不意に女性が呟いた。
ビクッと身体が動揺に震える。
こんなに動揺している自分に自分でも驚いた。
部屋の中をちらりと窺う。
一瞬しか見えなかったが1人の女性が泣いていた。
扉に背を向けていたのでここからでは後ろ姿しか分からなかったが、女性で間違いないだろう。
(そういえば、1人娘がいると言っていたな…殺し損ねたか)
気配を消して部屋に入る。
女性の後ろ姿をしっかりと見た時、足が止まってしまっていた。
(なっ…)
似てる、“あの人”に…。
さっきとは違う理由で鼓動が早まる。
…でも、“あの人”なわけない…だって、何百年も前にすでに死んでいるのだから…
頭を振って、思考を振り払った。のんびりしている暇は無い。今は時間が無いのだ。集中しなければ。
すると、座り込んで泣いていた女性が急に立ち上がり、フラフラと頼りない足どりで歩き出した。
素早く女性の後ろにつくと、女性の両腕を取ってねじ上げ、動きを抑えた。
女性は突然の事に驚いたらしいが、我に返って腕から抜け出そうともがく。
「動くな」
冷ややかな声で言うと同時にナイフを取り出し、女性の頚動脈に当てた。
女性の動きが止まる。むしろ無気力に“早く殺せ”とでも言うかのように全く動かなくなった。
…おかしい。何故私はこの女性を殺さない?
普段ならもうとっくにこの女性の首は繋がっていないはずだ。
見つけた時点ですでに殺していた。
無意識に手がカタカタと震えている事にふと気付く。
私は…恐がっているのか?“あの人”に似ているこの女性を殺す事を。
「何で、ためらうの?何で、震えているの?…あなた、恐いの?」
不意に女性が呟いた。
ビクッと身体が動揺に震える。
こんなに動揺している自分に自分でも驚いた。