朱の悪魔×お嬢様
 気がつくと葬式は終わり、凜は家にいた。


 “しっかりしなきゃ”


と思えば思うほど息が詰まる日々。

 今日もまた、人に迷惑をかけてしまったかもしれない。また記憶が曖昧だった。

(とんだご身分だこと)

 自分が嫌いになっていく。

 ずぶずぶと底無しの沼に沈んでいくようだ。

 親が死んだっていうだけの話。もう子供じゃないんだから…しっかりしろ。

 パンッと自分の頬を叩いて気持ちを切り替える。

(家に閉じこもってちゃ駄目ね…)

 気分転換に外へ出てみよう。

 といっても自分が一人で行ける場所といえば本屋くらいだが。

 苦笑いしながら凜は家を出た。



 *-*-*-*-*-*-*-*-*



 本屋は意外と空いていた。

 いつものように文庫コーナーなどを見ながら店内を歩き回る。

 ボーっとしていたせいか

ドンッ!!

 という突然の衝撃に数歩後ろへよろける。

 見ると中学生くらいの少女が転んでいた。

 ぶつかれたのこっちのはず…。と思いながらもこんな光景を前にも見たな、と頭の片隅で思い出していた。

 どこかで見た少女の顔、光景。

 あぁ。そうか。“あの日”にも同じようにぶつかったっけ。

 しかも、偶然か何かか、相手も同じ少女だった。

 口元に自然と小さく笑みが浮かぶ。

「大丈夫?」

 そう言って少女、美玖に手を差し出した。
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