朱の悪魔×お嬢様
次の日
凜が目が覚めると屋敷の中に美玖の姿は無かった。
代わりにリビングのテーブルの上に小さな手紙が残っていた。
綺麗な字で短く、こう書いてある。
『凜さんへ
用事を思い出したので、すみませんが帰ります。泊まらせて頂き、ありがとうございました。
美玖』
凜は何故かくすりと笑ってしまった。
ちゃんと置手紙を残す所があの子らしいなと思う。
けどやっぱり帰ってしまった事には残念な気持ちがあった。
一つ深呼吸をし、気を取り直して凜は玄関に向かう。
新聞を読むことはあの事件があった後もまだ毎朝の日課だった。
朝刊を取り、コーヒーを飲みながらのんびりと読む。
朝刊にはお決まりのごとくまた“紅い悪魔”の事件が載っていた。
そして、自分の事も。
「はぁ…」
溜め息がこぼれ落ちる。
いつになったら私は新聞のネタから消えるのだろう?
うんざりとした気分がまた出てきた。
美玖に会い、せっかく立ち直れそうだったのに世間の話題はまた私を暗闇の底へと陥れようとする。
負けるものか
凜は口を引き結び、立ち上がると出掛ける準備をした。
目的地は―――新聞社。
世間に挑戦状を出す為に。