朱の悪魔×お嬢様
【紅い悪魔】

 それは、何ヶ月か前に突然現れ、今世間を最も騒がしている殺人鬼だ。

 紅い悪魔が出た所には、生きている人間は1人もいなくなる。

 そして、その場所には代わりに数時間前までは生きていたであろう《物》―――死体が転がっていた。

 死体の周辺には、勿論死体の血が飛び散り、最悪の場合は死体の身体のパーツが落ちている事もある。

 だが不思議な事に、その血が幾千もの鮮やかな紅い羽根がばら撒かれているように見えるというのだ。

 只の目の錯覚に過ぎない。

 だが、多くの悲惨な死体があるにもかかわらず、そんな風に見えるなんて本当に不思議な事だった。

 だから、普通の殺人鬼と紅い悪魔は少し違う感じをさせる。

 殺人鬼とどこがどう違うのかははっきり分からないが、ただがむしゃらに殺しているわけではない気がするのだ―――殺す事には変わりはないのに。

 ついでに困る事として、目撃者も被害者も皆殺しなので、当然証言者がいない。

 警察が全力で紅い悪魔を探しても未だ手掛かりは無し。まさにお手上げ状態だ。

 そして世間は新聞記者を初めに、その殺人鬼を『紅い悪魔』と呼ぶ。
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