朱の悪魔×お嬢様
「ありがとうございます…」

 凜が遠慮がちに座布団に座るのを見、そして凜の顔を改めて見つめた。

「本当に…茉莉亜さんにそっくりね…」

「え?」

 しみじみと呟いた凌のセリフにハッと凛が顔を上げる。

 その反応を見て、逆に凌も少し驚いたように口元に手をあてた。

「あら、美玖から聞いていないの?…本当に何も話さなかったのね」

「茉莉亜…さん、とは?」

「茉莉亜さんは“前の主”です」

「前の主…?」

 怪訝そうに眉をひそめた凛に凌は柔らかく微笑む。

「まず、この家のことから先に話しますね。茉莉亜さんの事はその後で」

「…お願いします」

 軽く頭を下げた凛に、凌は柔らかく微笑んだ。

「では突然ですが、この家は代々忍者の家系なんですよ」

 突拍子もない凌の、本当に突然なセリフに凛はきょとんと目を丸くした。

「忍者、ですか…?」

「えぇ。あ、もちろん昔の話ですけどね」

 凌は口元を手で隠しながら楽しそうに笑う。が、すぐにその笑みを消した。

「でも、家訓は未だ続いていますが…」

 凌は言うと、すっと一枚の古い和紙を凛に差し出す。

 和紙には大きく赤で複雑な紋様が描かれていた。

「これは…?」

「この家に代々伝わる、契約の紋様です。…美玖の背中にもこれと同じ刺青があります」

「契約?刺青?」

 全く予想していなかった話の展開に凛はうまくついていけず、混乱しはじめる。

「…この家は代々忍者の家系にあった、と言いましたよね?先祖は主を守る為、より強い力を欲しました。そして…あろうことか、悪魔と契約を交わしてしまった」

 凌は静かな口調で淡々と語りだした。

「悪魔と契約を交わした先祖は背にこの紋様を刻み、その身に悪魔の力を宿しました」
< 58 / 66 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop