朱の悪魔×お嬢様
「でも、その強大な力は諸刃の剣。一歩間違えれば…契約を破れば、逆に悪魔にその身を取り込まれてしまう、とても危険な契約です」


悪魔に…取り込まれる…?


 そう呟いた凛の脳裏に、レライエの姿から美玖の姿へと戻るときの映像が流れる。

 あの変身が美玖の意思で行われたことではないことは明らかだ。

 あれが、『悪魔に取り込まれる』ということなのだろう。

「取り込まれてしまったら…美玖ちゃんは…美玖は、どうなるんですか?」

「もう悪魔を止めることはできません」

「そんなっ…!」

 凛は目の前が真っ暗になったような錯覚に陥る。


手遅れ、という事…?


「落ち着いて凛さん。止めることは出来ないけれど、“従わせる”ことなら出来ます」

「え…?」

「それが、“主”の役目。悪魔は、悪魔自身が認めた者に従い、守り抜く…」

「ある、じ…」

 凛が言葉を噛み締めるようにゆっくりと繰り返す。

「そう。前の主は茉莉亜さん、今の主は…あなたよ、凛さん。もう契約はかわしたでしょう?」

 あ…、と凛の口から声が漏れ、反射的に掌を見る。

 手には包帯が巻かれていたが、包帯を外せばまだそこに生々しい十字傷が残っていることだろう。

「でもっ…私は何もしていません。なぜ…私が主に…?」

「凛さんは…転生、というものを知っていますか?」

 凛の問いに逆に凌が優しく問いかける。

 こくり、と凛は弱々しく頷いた。

「つまり、凛さんは茉莉亜さんの“生まれ変わり”ということです。そのお姿が証拠、ってところでしょうか…」

 そう言いながら凌は凛にまた別の紙を差し出す。
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