朱の悪魔×お嬢様
 とってみると、それは古い写真であった。

 そして、そこに写っていたいたのは―――

「わたし…?!」

「いいえ、茉莉亜さんです。今から約1500年前の世に生き、悪魔の主となった方―――」

 その写真に写る茉莉亜は、正に凛と瓜二つといった姿だ。

 凌は凛から視線を外し、目を伏せる。

「茉莉亜さんの生まれ変わりなら、魂の根源も同じ…凛さんは美玖が契約を破ったとき、その時から主となる運命となってしまった…」

 凌はそう呟くと黙り込み、すっと凛へまた視線を戻した。

 凌の鋭い視線に射抜かれ、凛は緊張からかごくりと唾を飲み下す。

 普段だったら聞こえにくい音が、静まり返った部屋にはいやに大きく聞こえた。

「突拍子もない話ですみません。信じていただけれなくても結構です。ですが、私は一切嘘は申しておりません」

 鋭い視線、真剣な雰囲気に凌が嘘を言っているようには到底思えない。

 確かに突拍子も無い話だが、真実のほかないだろう。

「大丈夫です。信じます」

 そう凛がはっきり言うと、ホッとしたように凌は視線を和らげた。

 そして優しく問う。

「ありがとうございます…一応これでこの家のこと、茉莉亜さんのことをお話しましたが、他に何か聞きたいことは?」

 凌の問いかけに凛は数秒逡巡した後、言葉を選びながら訊ねた。

「どうして…悪魔は美玖に…?」

「悪魔は代々、赤峰家当主の身に宿ります。代々といっても、必ず同じ悪魔が宿るわけではありませんが。美玖に宿った悪魔…レライエは中でも厄介なものです」

「厄介とは?」

 凛が眉間に皺を寄せて訊ねると、凌は重苦しそうに口を開く。

「レライエ…紅い翼をもつ悪魔…紅は貪欲に紅を求め続ける。つまり、血を求め続ける…ここまで言えば、お分かりいただけますか?」

 言われて凛は息を呑んだ。

 “血を求め続ける”

 言い換えれば、殺し続けるということ。

 凛は数秒間黙り込み、視線を空中にさまよわせた。
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