朱の悪魔×お嬢様
そしてまた、別の疑問を浮かばせる。
「あの…レライエは本来、赤峰家当主に宿るんですよね?でも、美玖の名字は確か…」
「えぇ、柊です。契約を破ったとき、美玖はこの赤峰家から縁を切られてしまいました…なので、母方の旧姓の柊となったのです」
そこまで聞いて先程の嫌な視線の意味を理解した。
そりゃあ、赤峰家から縁を切られているものと、わざわざ仲良くしようと思うものはいないだろう。
「そう、なんです、か…」
凛は悲痛な面持ちで目を伏せる。
重い沈黙が二人の間に流れた。
しばらくの沈黙の後、沈黙を破ったのは意外にも凌だった。
「ちょっと、急に色々と話してしまいましたね…。お休みしますか?」
「あ、いえ、大丈夫です。こちらこそ色々とお訊ねしてしまってすみません…」
凌の気遣いに凛はかしこまってしまう。
そして凛はすぐに思案顔になると、また口を開いた。
「あの…すみませんがもう二つ、お訊ねしてもよろしいでしょうか?」
「えぇ、構いませんよ。せっかくここまで来てくださったんですから、聞きたいことは全部聞いていってください」
笑顔で快く承諾してくれる凌に、つられて凛も表情を和らげる。
「ありがとうございます。えっと…なぜレライエは大企業ばかりをターゲットにしたのかと…」
「忍びは主を守るもの。主を守ることは敵を倒すこと。主が大企業なら敵も大企業、ってところかしらね」
「なら…なんで…なんで、父様までっ」
「…レライエにとって、あなた以外は皆敵なのです。たとえ、お父様でも。…あの時、あなたがすでに羽須美財閥の現当主だったのなら恐らくお父様は…助かったかも、しれませんが…」
「そう、ですか…」
凛は下唇を噛んで、凌から目をそらした。
目の端にじわりと涙がたまり始める。
恥ずかしい
父のことを少し思い出しただけで、まだ子供のように涙が出てしまうなんて。
しかも、もっと早く自分が財閥を継いでいたのなら、父の命も、執事達の命も、もしかしたら助かっていたのかもしれないのだ。
「あの…レライエは本来、赤峰家当主に宿るんですよね?でも、美玖の名字は確か…」
「えぇ、柊です。契約を破ったとき、美玖はこの赤峰家から縁を切られてしまいました…なので、母方の旧姓の柊となったのです」
そこまで聞いて先程の嫌な視線の意味を理解した。
そりゃあ、赤峰家から縁を切られているものと、わざわざ仲良くしようと思うものはいないだろう。
「そう、なんです、か…」
凛は悲痛な面持ちで目を伏せる。
重い沈黙が二人の間に流れた。
しばらくの沈黙の後、沈黙を破ったのは意外にも凌だった。
「ちょっと、急に色々と話してしまいましたね…。お休みしますか?」
「あ、いえ、大丈夫です。こちらこそ色々とお訊ねしてしまってすみません…」
凌の気遣いに凛はかしこまってしまう。
そして凛はすぐに思案顔になると、また口を開いた。
「あの…すみませんがもう二つ、お訊ねしてもよろしいでしょうか?」
「えぇ、構いませんよ。せっかくここまで来てくださったんですから、聞きたいことは全部聞いていってください」
笑顔で快く承諾してくれる凌に、つられて凛も表情を和らげる。
「ありがとうございます。えっと…なぜレライエは大企業ばかりをターゲットにしたのかと…」
「忍びは主を守るもの。主を守ることは敵を倒すこと。主が大企業なら敵も大企業、ってところかしらね」
「なら…なんで…なんで、父様までっ」
「…レライエにとって、あなた以外は皆敵なのです。たとえ、お父様でも。…あの時、あなたがすでに羽須美財閥の現当主だったのなら恐らくお父様は…助かったかも、しれませんが…」
「そう、ですか…」
凛は下唇を噛んで、凌から目をそらした。
目の端にじわりと涙がたまり始める。
恥ずかしい
父のことを少し思い出しただけで、まだ子供のように涙が出てしまうなんて。
しかも、もっと早く自分が財閥を継いでいたのなら、父の命も、執事達の命も、もしかしたら助かっていたのかもしれないのだ。