朱の悪魔×お嬢様
 凌はあまりの驚きにしばらく黙り込んでいたが、やがてゆっくりと口を開いた。

「美玖を…引き取ってくださるのですか?」

「はい!以前、本人にこの話をしたのですが、『本家』が認めない、と言って断られてしまったんです…」

「そうなんですか…引き取って下さるのなら、喜んでこちらからお願いしたいです。あ、でも、あの子を厄介者扱いしたい訳ではないんですよ?ただ…」

 凌は慌てて訂正を入れ、視線を下にそらす。

「マンションに一人で住まわせて、美玖に寂しい思いをさせてしまって…どうせ離れて住まわせるのなら、凛さんと一緒のほうが、あの子の為にも良いと思うんです。…美玖のこと、よろしくお願いできますか?」

 視線を凛に戻し、真剣な表情で、真剣な瞳で、凛に問う。

 あまりにも真剣な凌の表情に、凛は逆に困惑してしまった。

 そして、同時に思う。



『あぁ…美玖には、こんなに大切に思ってくれる人が、ちゃんといるんだ』



「はいっ」

 凛は力強く肯くと、ゆっくりと立ち上がった。

「では、そろそろ失礼します」

「そうですね…もう少しお話したかったけど…」

 凌がいかにも残念そうに言うと、凛も頷く。

「はい、私もです…あ、美玖の手続きはまた後ほどで…」

「分かりました」

「なんか…聞くだけ聞いてしまってすみません。長々と、お邪魔しました」

 凛が深々と頭を下げ、部屋から出ようと襖に手をかけたとき
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