朱の悪魔×お嬢様
「凛さん」

 凌が静かな声で呼び止めた。

「はい?」

「最後に、美玖…あの子の本当の名前を知っていってほしいの」

 振り向くと凌は凛に真剣な、でもどこか悲しげな瞳を向けていた。

「本当の、名前…?」

 小首を傾げた凛に凌は小さく肯き、そして、ゆっくりと言葉をつむぐ。


「あの子の…あの子の本当の名前は…―――」


 本当の名を告げた凌が見た凛の表情は、柔らかく微笑みをたたえていた。

 そう。まるで、























 ―――…聖母のように。
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