猫の初恋
鋭い三白銀の瞳に高くすっと通った鼻筋、品よく整った顔立ちは同じ中学生にしては大人びて見える。

身長もひとつ年上の兄より高い上に、がっしりした肩幅で手足はスラリと長くてまるでモデルさんみたい。

花音ちゃんから彼は一匹狼の不良だって聞いていた。

しかも、クールな性格で女子達から学校一モテモテなんだとか。

確かに、猫もびっくりなくらいのイケメンだけど雰囲気が怖すぎるよぅ。

でもでも、確かめなきゃいけないことがある。

私は勇気を振り絞って恐る恐る尋ねた。

「あ、あの何か見ましたか?」

唐突に質問された彼は冷たい目で私を見下ろした。

ひいっ、やっぱり怖いよ。

すっかり怯えている私に彼は面倒くさそうに答える。

「何かって?」

「ね、猫とか」

「猫?知らね」

そっけなく返して、彼は制服の汚れを手でパンパンとはらった。

そ、そっか。見てなかったのか。それならよかった。
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