猫の初恋
「そっか、そうだったんだ」
なぜだかわからないけど、私は胸の奥がスッと風通しがよくなったような気がした。
「猫宮どうして嬉しそうな顔してるんだ?」
「へ?え、そんなことは無いけど」
見透かしたような笑みを浮かべる彼。
「俺が佐伯のことを助けてたらどう思った?」
「ええっ、そんなの。知らないよ」
「猫宮って案外わかりやすよな。すぐに顔に出るし」
「ち、違うったら。私はそういうことを言ってるわけじゃなくて」
ククッと声を殺して肩を震わせてる彼から背を向けて顔を隠した。
うう、油断してた。彼って結構意地悪だったんだ。
「そういうんじゃないからね、変な誤解しないで」
消え入りそうな声でそう言った私に追い打ちをかけてくる彼。
「そういうんじゃないって、どういう意味?」
「……知らない」
恥ずかしくて身を縮こませていたけど、心臓がバクバクとうるさくなった。
うわあ、こんなところで猫に変身しちゃったら一貫の終わり。
私はギュウっと胸をおさえて息を整えた。