猫の初恋
大丈夫、さっきだって変身せずに済んだ。今度も大丈夫。なぜだかわからないけれど、なんとなく自信があった。

案の定、すぐに胸のドキドキはおさまった。

もしかしたら、少しは猫化のコントロールが出来るようになってきてるのかもしれない。

「おい、大丈夫か?からかってわるかったよ」

一条くんは急に反省したように私の背中に話しかけてきた。

ずっと動かないで体を丸めていたから心配になったのかもしれない。

「大丈夫だよ」

振り返ってニコッと笑う。

「なんだよ、泣いてるかと思ったよ」

「そんなことくらいじゃ泣かないから」

「女ってわかんねーよ。すぐに泣いたり怒ったりするから」

「私はそんなこと無いけど」

彼が誰のことを思い浮かべているのかわからなかったけどなんだか胸の奥がチクっとした。

きっとこれまでたくさん女の子にモテてきたんだろうな一条くんだったら。

「そうだな、猫宮は安定してるな」

「安定って?」

「うーん、うまく言えないけど控えめっていうか落ち着いてるっていうか」

「へ?」

そんな風に思われてたんだ。
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