猫の初恋


教室を飛び出した私は行くあてもなくとぼとぼ歩いて中庭にたどり着いた。

まだ、6時間めが終わっていなくて生徒たちは教室にいるからここは静かだ。

大きな木を取り囲むようにあるベンチに腰を下ろして一息ついた。

キラキラと降り注ぐ木漏れ日を浴びて日向ぼっこすると気持ちがよくて心が落ち着くんだけど、今はとてもそんな気分にはなれなかった。

こんなことなら、鞄を持って出てくればよかった。

そしたらそのまま家に帰ることができたのに。

また教室に戻らないといけないと思うだけで気が重いよ。

しばらく時間をつぶすしかないなって思った。

花音ちゃんの怒ったような顔が浮かんできて瞼を伏せる。

せっかく、私を一緒のグループに誘ってくれたのに最後にあんな断り方をしておまけに逃げてしまった。

きっと軽蔑されたって仕方がないよね。

「ごめんね、花音ちゃん」
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