猫の初恋
本当はそんなこと思っていないけど、虚勢を張るしかなかった。

きっと、彼は私を心配して来てくれたんだろうなって感じてたけど。

恥ずかしさと情けない気持ちが入り混じって素直になれなくて。

「まさか、1人が好きな奴なんていないだろ」

「いるもん、ここに」

「じゃあさ、後藤はあのままでいいの?」

「え?」

「お前が出て行った後、もう一度初めからグループ分けをやり直そうって提案してる。みんなにウザがられても、頑張ってたけど。あのまま放っておいても構わない?」

「花音ちゃんが?」

花音ちゃんが私のためにそんなことを。

けど、彼女ならきっとそうするだろうってことくらい、容易に想像できたはずだったのに。

「佐伯は佐伯で、さすがにやりすぎたかなってしゅんとしてる。まあ、自業自得だしってことで仕方ないか?」

「佐伯さん……」

私が飛び出したせいで、かえって気まずくさせてしまったのかな。

「私のことなんてみんな放っておいてくれていいのに」

「そうもいかないだろ」

私の投げやりな反応に彼は浅いため息をついた。

「……」
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