猫の初恋
「相手の全部を知らなきゃ友達になっちゃいけないってルールなんてないよ」

「でも」

「俺は猫宮にたとえどんな秘密があっても友達でいたいけどな」

「……」

「それに猫宮が一生隠したいならそれでもいいと思う」

「……」

「俺と友達になれる?」

「どうして、そこまで信じてくれるの?」

わからないよ、一条くんのことが。

「この前俺を助けてくれたじゃん。あんなのよっぽど勇気のある奴にしかできない。俺、猫宮と一緒に逃げてた時、結構感動したんだよ」

そう言って、彼はすっと手を差し伸べてきた。

「どうして人のためならあんなに必死で動けるのに自分のことはすぐに諦めちゃうんだよ。
そんなの悲しいだろ」

「……」

「猫宮どうしたい?お前が決めたらいい」

どうするかを私の意志にゆだねてくれている。

この間のことだけで私をそこまで信用してくれたなんて。

でも彼との距離がいつの間にか縮まってたんだとしたらすごく嬉しい。

私はコクっと息を呑む。

気がつけば勝手に言葉が溢れだす。
< 119 / 160 >

この作品をシェア

pagetop