猫の初恋
「なりたい……友達に。一条くんと」

「ああ」

照れくさそうに笑って頷く彼。

おずおずと手を伸ばすと、彼の大きな手に包まれた。

「な?難しくないだろ?こんな感じで次はあっちとも話せば?」

「え?」

彼の目線の先を追えば……そこには不安そうにうつむいている花音ちゃんがいて。

「花音ちゃん」

私は立ち上がって、彼女のほうへゆっくりと歩を進めた。

もしも許されるなら、私は……。

「ずるいよ、一条くんだけ」

「花音ちゃん」

彼女は唇を引き結んで顔をしかめていたから、きっと怒っているに違いないって思った。

「すずちゃん、水臭いよ。秘密があるから友達になれないとかわけわかんない」

どうやら、私と一条くんのさっきの会話は全部聞かれていたみたい。

もしかしたら一条くんはそれに気が付いて私の本心を引き出してくれたのかな?

「花音ちゃん」

「私ばかみたいじゃん」

「違うの、私は花音ちゃんが大好きで……いつも話しかけてくれるのが嬉しくて」

「もうとっくに、友達だって思ってたのに」
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