猫の初恋
「あんたが、猫宮さん?」

「……」

「ああ、間違いねえよ。この前一条と一緒に逃げた女だ」

「……」

怖くて声が出ない私をよそに、男子達は顔を見合わせてニヤッと笑う。

「この子が一条をおびき寄せる餌なんだよな?」

「かわいそうに、あんな奴と関わるから」

「おびき寄せる餌ってどういうこと?」

逃げるのも忘れて彼らに尋ねた。

このまま私一人何も知らないまま逃げるわけにいかない。

「私の下駄箱に手紙を入れたのはあなたたち?」

「そうだよ、告白とか思った?残念だねー」

「おびき寄せるって何?一条くんに何をするつもり?」

「……睨んじゃってるよ、こえー」

私の態度が予想と違ったのか彼らの1人が不機嫌そうに鼻を鳴らす。

「あんたのことをここで足止めするようにって上から言われてるだけ。俺らはなんも知らねーよ」

「嘘つかないで」

「なんだこの女、面倒くせえ」

「おい、あそこに閉じ込めようぜ」

1人がそう言って体育館倉庫を指し示すともう一人も頷く。

「はいはい、おとなしくしてねー」

「俺ら女の子に暴力ふるいたくないからさー」
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