猫の初恋
よーし、行くぞー。

白猫に変身した私はドアとドアの隙間に身体を押し入れて身をよじりながら、体育館倉庫からなんとか脱出に成功。

「ニャー」

あとは、高い壁めがけて猛ダッシュで駆け上がっていった。

こんな小さな身体なのに凄いパワーがみなぎっている気がした。

以前に変身した時とは比べものにならないくらいにエネルギッシュ。

壁のてっぺんまで登ると、躊躇なく飛び降りた。

二回転半して無事に地面に着地。

間違いない、化け猫の能力がアップデートされている。

このまま突き進む。

一瞬、お兄に助けを求めようかと思ったけど、すぐにそれは無理だと諦めた。

だって、お兄のチカラは家族を守るためにあるものだから、一条くんを助けるためだけには使えないんだ。

禁を破ることはあやかし界からの追放を意味する。

お兄を巻き込むわけには行かない。

そもそもお兄を探している時間も惜しい。

こんな小さな身体で何ができるかなんてわからない。

それでも……。

私は一条くんのもとへ走る。

待ってて、一条くん、今行くから。

私が着くまでどうか無事でいて。
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