猫の初恋
20人近くいる黒門生達が一条くんを取り囲んでいる。

番長は木刀のようなものを右手に持っていて、それで一条くんを殴りつけていたようだった。

「バニラ?」

いまにも、倒れそうで立ってるだけでもやっとって感じの一条くんが叫んだ。

「ニャ、ニャ」

仁王立ちの番長めがけて突進した私は彼の足に思い切り爪を立てた。

「いってー、ななな、なんだ」

番長は足を押さえて飛び跳ねたけど、こんなもんじゃ絶対許せない。

私を誘拐したって言って一条くんをおびき寄せて、無抵抗の相手をなぶるなんて。

こんなの喧嘩でもなんでもない。

怒りのままに素早く番長の身体をよじ登っていく。

「ウギャアー、ネズミ」

パニックになった番長の断末魔のような叫び。

よくも一条くんを。
絶対に許さない。

バリバリと顔を引っ搔いてやろうとしたら、大きな手ではらわれた。

バサッ。

全身に激しい衝撃を受けた私は軽く1メートルは吹っ飛ばされてしまった。

しまった……バランスを崩してうまく着地できそうにない。

「バニラー」
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