猫の初恋
「ええっ、なんか変っすよ、喋り方」

怖いものでも見るような目をする部下達。  

どうしょう、こんなの、やだよ。

番長に取り憑いたって事実が恐ろしくなって、どうしたらいいかわからなくて一条くんをすがるように見つめた。 

「一条くん……違うの、これはわざとじゃなくて。私、無我夢中で」

「……誰だおまえ?」

彼は驚いたように目を見開く。

「番長じゃないのか?」

その瞳には得体の知れないものに対する恐怖の色がはっきりと浮かんでいた。

「あ……」

当前だよね。

人に取り憑くなんてこんな化け物になっちゃったんだから。

もう私、一条くんのそばにはいられないかもしれない。

こんな私、いくらなんでも受け入れてもらえない。

秘密があっても、友達だって思ってもらえないよね。

でも、だけど……。

「……嫌いにならないで、お願い」

悲しくて泣きそうになった。

「……ッ」

すると一条くんの体がフラっと揺れて、倒れそうになり地面に膝をついた。

「一条くんしっかりして」

顔が真っ青で辛そうな彼。

おそらく、彼はもう限界なんだ。
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