猫の初恋
誰だかわからないのに、その人にもう一度会ったら、言いたいことが山ほどある気がする。

バカ
ありがとう
どうして?
大丈夫?
ごめん
大好きだよ

「行くな、猫宮」

「戻ってこい、行くなよ」

「猫宮、帰ってきてくれ」

「なんだっていいから、とにかくこいつから出ろ、戻れ、戻れ」

簡単に言わないでよ、一条くん。

「戻れ、戻ってこい」

戻り方なんて私にわかるわけないでしょ、

あれ?

今私、一条くんて言った?

「猫宮、早く。このままだとおまえは消えちゃうんだぞ。そんなの嫌だろ?いや、俺はそんなの許さないぞ。勝手に消えるなんて許さないからな」

うわあ、一条くんたらキレちらかしてる?

「名前を呼べばいいんだって。いまお前のお母さんがそう教えてくれた。だから呼んでくれ」

お母さんがそこにいるの?でもどうして一条くんの声しか聞こえないんだろう。

「いちじょうちはや」

「俺の名前を呼んで、頼む」

あれ、今度は猫撫で声だ。

「頼む、猫宮、安心して戻ってきて。俺はおまえの友達だろ?俺を信じてくれ」
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