猫の初恋
ああ、私ようやく戻ってこれたんだ。

あれ、でもなんだかこの体勢は……。

私は一条くんの腕の中にいて彼の膝の上に座っていることにようやく気がついた。

会いたかった、もう一度。

「ニャンッ」

熱にうかされたように、一条くんの首にギュッとすがりついて甘えると幸せを胸いっぱいに感じた。

「ニャニャ」

「猫宮っ?」

一条くんは戸惑ったようにパッと顔を逸らした。

「すずー、落ち着けー、今すぐそいつから離れなさい」

兄の半狂乱の声がうるさい。

「落ち着くのはりん、あなたよ。すずは意識が混濁しているの。しばらく待ってあげなさい。初めて人に取り憑いたんだから。元に戻るのには時間が必要なの」

母が兄に説明をしているのを聞いて、首を捻った。

ん?意識が混濁してる?私が?

「猫宮、ちょっとだけ離れよう」

彼は照れ臭そうに顔を赤くして、私を引き離そうとした。

「いやなの?」

小首をかしげて尋ねたら一条くんは小さい声で答えた。

「嫌とかじゃなくて、おまえの家族の前だから」

「いやじゃない?よかったー」
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