猫の初恋
「でも、それじゃ猫宮が可哀想です。クラスに友達だって出来たし。このままここにいさせてやってくれませんか」

一条くんが私のために必死で家族を説得しようとしてくれている。

その気持ちは嬉しいけど、簡単なことじゃない。

私は半ば諦めかけていたけれど、一条くんは違った。

「猫宮、おまえはどうしたい?それでいいのか?また、別の街に行って新しくやっていくのか?俺たちのことそんなに簡単に忘れられるのかよ?」

熱っぽく問いかける一条くんから、目を逸らせた私。

「私、私は仕方がないって思ってる。だってそういう決まりだから」

「俺はそんなこと聞いてないよ。猫宮の気持ちが知りたいんだ」

「私の気持ち……」

「猫宮」

「私は」

彼と目を合わせると、笑おうとしたけどうまく出来ない。

「私、これまで誰も友達がいなかった。ほんとは寂しかったけど、仕方がないんだって思ってた」
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