猫の初恋
「一条くん」

「どんなに不思議な力があっても、猫宮は猫宮だろ。嫌いになったりなんかしない」

「……」

「俺の気持ちはどうなるんだよ。2回もフるなよ、俺がそんな理由で猫宮のことを諦められるわけないだろ」

照れ臭そうに手で顔を半分隠しながら、そう言った彼は耳まで赤くなっていた。

「え、フるってまたそんなこと……」

カーっと顔から火が出そうなくらい熱くなる私。

そっと目と目が合うと、泣きたいくらい切なくなる。

「やっぱり、離れたくない」

ここに……彼のそばにいたい。

自然と口をついて出た願い。

すると今まで黙って私達の様子を見ていた母が私の肩を抱いた。

優しく背中をさすられたから心地よくて気持ちが落ちつく。

「すず、ごめんね。
お母さん、すずをどんな風に育ててあげたらいいのかわからなくなっていたの。すずの力は特殊で私にもその本質がわからない。だけど自衛のためとはいえ、すずに友達をつくらないようにって言うなんて残酷だったよね」

母はうっすらと涙を浮かべているから、辛かった気持ちが伝わってきた。
< 154 / 160 >

この作品をシェア

pagetop