猫の初恋
母も葛藤しながら私を育ててくれていたんだなってわかる。

「お母さん」

「最近のすずを見ていたら、凄く楽しそうでイキイキしてた。とても嬉しかった。ほんとは人との関わりの中ですずの力はコントロールするしかないのかもしれない。それに、助けてくれる人がいれば尚更その方が……いいよね」

母はそう言ってにっこりと微笑んでくれた。

「お母さん……私ね、人が好きなんだと思う。だからこんな力にも意味があるって信じたいの」

かつて、いにしえの化け猫、猫又と忌み嫌われたあやかし達もそうだったのかもしれない。

人が好きでたまらなくて振り向いて欲しかったんだと思う。

そのために与えられたあやかしの特殊なチカラだったんだって思いたい。

「すずがそう感じるならきっとそうだね」

「母さん、俺も賛成だよ。すずが寂しい顔してひとりぼっちでいるところなんてもう見たくないよ。他の場所に行ってもこんなにすずを大事に思ってくれる奴には出会えないかもしれないだろ」

兄も私の横に来て母の意見に賛同してくれた。

「すず、辛くてもその力はあなた自身だから、向き合っていくしかないね」

「うん」

「一年間だけチャンスをあげる。私が時を稼いでるあいだに2人で見つけなさい」

母は一条くんと私を交互に見つめ、優しく微笑んだ。

「2人が一緒にいられる方法を探すの。あなた達自身のやり方でね。そして、すずは自分のあやかしのチカラのすべてを習得しなさい」

母の提案を聞いた私は一条くんに目を向ける。

すると、彼は深く頷いてくれたから私は胸がいっぱいになる。

私達は母に向き合い息を合わせた。

「「はい」」


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