猫の初恋
すると、また佐伯さんの不満そうな声が教室中に響いた。

「はいはい、今いく。じゃあねすずちゃん」

「うん」

花音ちゃんは明るく笑って佐伯さん達の方へ行ってしまった。

私は胸のあたりを押さえて小さく息を整えた。

実はさっきから、胸の鼓動が早くなっていて焦っていたんだ。

あんまり嬉しくて感情が昂っているのがわかる。

花音ちゃんとおしゃべりするだけでもウキウキするのに、その上こんな素敵なプレゼントまで貰えて。

私は自分自身のチカラをまだ思うようにコントロールできない。

人と接した時の喜怒哀楽の感情が激しくなると、勝手に猫の姿に変身してしまうんだ。

トリガーになるのは人間に対しての抑えられない感情の爆発。

つまり、変身しないように胸のドキドキを抑えないといけなくて。

こんなところで、突然猫の姿に変身なんてしたら大変。

実は前の学校で一度だけ、失敗している。

もう、あんな失敗は絶対避けなくちゃいけない。

はぁはぁはぁ。
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