猫の初恋
「黒門の不良達、番長がやられたから意地になってるみたいよ」

「ダッサ、いい加減諦めたらいいのに」

そこで、佐伯さんが胸の前で手を組んでくねくね体を揺らしながこう言った。

「どうしよー、こんなことになったのも全部私が悪いのっ。一条くんがあの時私を悪い奴らから助けてくれたせいなの」

周りの女子達はなんとも言えない苦笑いを浮かべ、男子達は呆れたように顔を見合わせる。

ああ、この話また始めるんだ。

もう100回以上は聞いた気がするよ。

「私が犬の散歩をしてる時に黒門の生徒に絡まれてるところを、一条くんが助けてくれてそれがきっかけだから責任感じちゃうよ」

悲劇のヒロインみたいに泣きそうな顔をする佐伯さん。

「私、どうやって償えばいいのかな?」

佐伯さんが花音ちゃんに問いかける。

「でも、一条くんは助けた覚えはないって言ってたじゃん?なんでだろ?」

「うっ、そ、それは単なる照れ隠しよ。
やっぱり、私、償うために彼の彼女になってあげたらいいと思う?」
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