猫の初恋
「ああーん、いじわるー」

「……」

彼は彼女の方を見ようともしないで、ひたすら塩対応。

だけど佐伯さんは何度断られようと諦めずにニコニコ笑っている。彼は明らかに迷惑そうなのに。

この光景もしょっちゅう見ている気がするなぁ。

あんなに冷たくあしらわれてるのに、なんでずっと好きでいられるんだろ?

私だったら、どんなにイケメンでも何を考えてるかわからない人は苦手。

……って、そもそも私は誰かに恋愛感情なんて持ってはいけないんだけどね。

だって、恋くらい感情を揺さぶられるものは他にないだろうから。

ドキドキするたびに猫に変身なんてしてたら身がもたないよ。

そう思いながら、ぼんやり彼らを見ていたその時。

突然、佐伯さんの表情が険しくなる。

「なに?この可愛い絆創膏は」

彼の手の甲に貼られた白地に猫のマークのついた絆創膏を指差すと、苛立ちながら尋ねる彼女。

あっ、さっき私が渡した絆創膏、使ってくれたのか。

「……貰った」

「誰に?」
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