猫の初恋
恨めしげに睨んだけど彼は全然気がづいていないみたいだった。


私は恋する女の子の嫉妬を甘く見ていたみたい。

「猫宮さん、どうして呼び出されたかわかるよね?」

ギロリと睨まれて恐怖で戦慄した。

「う、うん」

教室を出た廊下の端で、私は佐伯さんにシメられていた。

「私の一条くんに色目を使わないでくれるかな?」

色目って、絆創膏を渡しただけなんだけどな。

それに、一条くんは誰のものでもないはずなのに。

そんな自分のものみたいな言い方したら彼が可哀想……なんて思っても言えないけど。

私は悲しいことにこういうことには、慣れていて。

これまで、どこの学校でもクラスのリーダー格の女子からはたいてい嫌われてしまうんだ。

だから、こんな時私はいつもどんな対応をするかあらかじめ決めているの。

心の中を無にして、感情の波を荒立たせないように……全ての気持ちを呑み込む。

「ごめん、もう一条くんには近づかないから」
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