猫の初恋
私、どこに連れていかれちゃうの?

さっきまで頭にモヤがかかったみたいだったのに、今はもうそれどころじゃない。

頭も目もはっきりと冴え渡っている。

一条くんの横顔が惚れ惚れするほど綺麗で息を呑んだ。

それに、筋肉質で引き締まった身体と0距離で密着しているなんて。

男子とこんなに接近したのは生まれて初めてだから、緊張しすぎて歯がガチガチと震える。

彼は早足で廊下の端まで移動して階段を降りて一階までたどりついた。

その途中ですれ違った人たちに、びっくりされたり騒がれたり。

「ええ、うそっ。一条くんがお姫様抱っこ!」

「あの子、彼女?悔しいけどちょっと可愛いかも」

「え、やだー。私もされたいー」

キャーとかギャーとか大袈裟な反応をされて、身が縮こまる。

一階に降り立った時に、彼は少しずり下がっていた私をもう一度高い位置に抱え上げた。

「しっかりつかまってろ」

「……」
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