猫の初恋
「すずー、その一回の失敗を助けてやったのは誰だ?」

兄は腕を組みながら上から目線で見下ろしてきた。

「うっ、それは……。あの時のことは感謝してるよ。でも私もう失敗はしないので」

「人も猫も失敗を積み重ねて大きくなるもんだぜ」

さも、いい事を言ってやったと満足気な兄。

ほんとに彼ほど能天気って言葉が似合う人はいない。

そのくせ、私とは違い愛想がよくて口がうまいからどこに行っても人から好かれる得な性格なんだよね。

「まあ、すずが失敗してもまた俺が助けてやるよ。安心しな俺はあやかし界のスーパーエリートだから」

片手を額にビシッと添えてキメ顔の兄。

「はあ、エリートね」

兄は5才の時にすでに自分の能力をコントロールする術を身につけていた。

一族の大人達からも将来を期待されていて、本人もちょっと天狗になっている。

それに比べて、私はまだまだ半人前以下。兄の足元にも及ばない。
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