猫の初恋
ごめんなさい、一条くん。

あんな言い方をしたからきっと怒ってるよね。

せっかく親切にここまで運んできてくれたのに……。

だけど、クヨクヨ考えている暇なんてなかった。 

布団が重い、重すぎる。

身体が圧迫されるくらいの重みを感じて潰れてしまいそう。

その時、私はもうすっかり猫の姿に変身してしまってたんだ。

「ニャニャ」

息苦しさと重さに格闘しつつ、なんとか布団から這い出した。

ふう、やっと息が吸える。

でも、これからどうしょう。

以前に学校で一度だけ猫になっちゃった時は、たまたまお兄が近くにいたからすぐに助けてもらえたんだけど今回はそうもいかない。

普通に猫の姿に変わっただけなら、自力でなんとか家まで辿り着けるかもしれない。

そこで、お母さんに元の姿に戻してもらえばいいだけの話なんだけど。

実はそれがかなり難しい。

なぜかと言うと、猫になった私は極端に小さいサイズなんだ。
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