猫の初恋
子猫よりも小さい白猫、それが私の化け猫の姿。

これも、私のチカラがまだ完全に覚醒していないせいらしい。

はあ、なんて中途半端なの。

ただ単に猫に変わるだけで、他には何もできないなんて。

お兄みたいにあやかしのチカラが使えれば、なんとかなるかもしれないけど。

どうやって家に帰ろうと考えて深くため息をついた。

家に帰るには電車に乗らないといけないし、さすがにこの姿で辿り着く自信がない。

よしこうなったら、お兄の教室に行って助けてもらうおう。

そうと決まればすぐに行動あるのみ。

ベッドからピョンと跳ねてなんとか丸椅子の上に着地して、今度は床に飛び降りた。

「ニャンッ」

その時、お尻を冷たい床にぶつけてしまって痛かったけどどうにか着地できた。

だけど、次の難関は保健室のドア。

横開きの硬いドアは重くてどんなに引いてもびくともしない。

「ニャブブブー」

体当たりもしてみたけど、疲れただけだった。

やっぱりこの姿では、どう頑張っても開けられそうにないな。
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