猫の初恋
助けてっ、お母さん。

迫り来る激痛を覚悟し頭を低く下げた。

「キャッ、なになに?」

「わあ、ごめん、痛かった?」

すると女の子のうわずった声が頭上から降ってきた。

ううん、全然痛く無いんですが……。

顔をあげたら信じられない光景に目を見張る。

大きな手が傘のように私を守ってくれている。

でもまだ何がどうなってるのかさっぱりわからないよ。

「ごめんね、踏んづけちゃって」

「いや、いい」

女の子の声は媚びるように甘ったるいけど、答える声はそっけない。

「どうかしたの?何か大事なものだった?」

「痛かったよね、大丈夫ー?」

「……」

女子達は次々と心配そうにその人に話しかける。

こういう一方通行の会話、最近よく聞くんだよね。

それでピンときた。

もしかして、この手の主はあの人?

でもまだ半信半疑でオロオロしていたら、その大きな手に包み込まれてゆっくりと持ち上げられた。
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